「親の会社を継ぐ」と決めたとき、多くの人が見落としがちなのが経営者保証です。会社の借入に対して社長個人が背負う連帯保証は、経営権と一緒に静かに引き継がれてしまうことがあります。誰が、どこまでの責任を負うことになるのか。承継を決める前に、家族で一度立ち止まって話し合っておきたいテーマです。
経営者保証とは何か、なぜ承継のときに問題になるのか
経営者保証とは、会社が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が連帯保証人となる契約のことです。会社が返済できなくなった場合、経営者は自分の預貯金や不動産などの資産を使ってでも返済する義務を負います。事業承継の場面では、先代が結んだ保証契約を後継者がそのまま引き継ぐケースが少なくありません。中小企業庁の「事業承継ガイドライン」でも、経営者保証の存在が後継者候補にとって承継をためらう大きな要因の一つとして挙げられています。会社の経営権や事業そのものを継ぐだけでなく、個人としての金融リスクも一緒に背負う可能性があることを、まずは家族全員で正しく理解しておくことが大切です。
個人保証を引き継ぐと家族の生活にどんなリスクがあるか
経営者保証は、後継者本人だけでなく家族全体の暮らしにも影響します。保証人になった後継者に万一のことがあれば、配偶者や子どもが連帯保証債務をそのまま相続してしまう可能性もあります。住宅ローンの審査や教育費の準備など、家庭の将来設計にも静かに関わってくる重い契約です。保証があることで金融機関からの信頼が得やすくなる面がある一方で、会社の業績が悪化した際には、会社の再建よりも先に家計にまで返済の負担が及んでしまう恐れもあります。継ぐ・継がないを決める前に、現在の保証契約がどの借入に、いくらついているのかを家族で一緒に確認しておくことが、後から後悔しない選択につながります。
家族で知っておきたい交渉・見直しの選択肢
経営者保証は「そのまま引き継ぐしかない」ものではありません。全国銀行協会と日本商工会議所が2014年に策定した「経営者保証に関するガイドライン」では、一定の条件を満たせば保証を求めない、または既存の保証を解除できる方向性が示されています。さらに信用保証協会の「事業承継特別保証制度」を利用すれば、承継のタイミングで経営者保証なしの借り換えや新規融資を受けられる可能性があります。日本政策金融公庫でも、事業承継期の資金調達について、経営者保証に頼らない融資の相談窓口を設けています。こうした制度は自動的に適用されるものではなく、金融機関や顧問税理士から積極的に提案されるとも限りません。家族として早い段階から情報を集め、専門家に相談しておく姿勢が欠かせません。
家族会議で確認しておきたい3つのこと
経営者保証の話は、後継者一人で抱え込むものではなく、家族全員に関わる問題です。まず一つ目は、現在の借入残高と保証の範囲を「見える化」すること。どの借入に、誰が、どこまでの保証をしているのかを、書面で確認しましょう。二つ目は、保証解除や借り換えの制度が使えるかどうかを、顧問税理士や金融機関の担当者と一緒に確認すること。三つ目は、継ぐ場合・継がない場合それぞれのシナリオで、家族の生活やリスクがどう変わるかを具体的に話し合っておくことです。対立して結論を急ぐのではなく、家族が同じテーブルで情報を共有しながら考えていく協働の姿勢が、納得できる結論への一番の近道になります。
よくある家族のすれ違いパターン
経営者保証をめぐっては、家族の間でよくすれ違いが起きます。たとえば後継者は「保証まで背負うのは不安」と感じている一方、先代は「自分もそうやって継いできたから当然」と考えているケース。あるいは配偶者や子どもが保証の存在自体を知らされておらず、承継後にはじめて重い責任の存在に気づくケースもあります。どちらも悪気があってのすれ違いではなく、経営者保証という制度そのものが分かりにくく、話し合うきっかけを持ちにくいことが背景にあります。だからこそ、後継者一人が抱え込む前に、家族の誰かが「保証について一度整理してみよう」と声をかけることが、すれ違いを防ぐ最初の一歩になります。
まとめ
経営者保証は、事業承継における大きな不安要素であると同時に、正しい知識と早めの準備があれば軽減できるリスクでもあります。家族目線で早めに話し合い、公的な保証免除の制度や専門家の力を借りながら、無理のない形で承継の道を選んでいきましょう。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の法的・税務判断を保証するものではありません。具体的なご判断にあたっては、税理士・弁護士・金融機関などの専門家にご相談ください。
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本記事は、株式会社C&Cが運営する事業承継メディア「つぐひと」が独自に作成したものです。
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