「うちの親、最近少し物忘れが増えたかも」——そう感じても、会社の話を切り出すのはためらわれるものです。けれど、経営者である親の判断能力が下がってからでは、できることが一気に狭まります。本記事は、親が会社を経営しているご家族に向けて、認知能力が落ちる前にやっておくべき5つの準備を、家族目線でわかりやすく整理しました。何から手をつければいいか迷っている方は、ぜひ最後までお読みください。
なぜ「元気なうち」が勝負なのか
帝国データバンクの全国「社長年齢」分析調査(2026年2月発表)によると、社長の平均年齢は60.8歳(2025年時点)と35年連続で過去最高を更新し、50歳以上の社長が全体の82.6%を占めています。また同社の全国「後継者不在率」動向調査(2025年)では、後継者が「いない」または「未定」の企業は約13.8万社。後継者不在率は50.1%と改善傾向が続いているものの、中小企業に限ると51.2%、小規模企業では57.3%と、いまだ2社に1社以上が後継者を決められていません。中小企業庁の「2026年版中小企業白書」(2026年4月公表)でも、経営者の高齢化と後継者問題は中小企業の構造的な課題として位置づけられており、高齢化は決して他人事ではありません。
最も注意したいのは、経営者が認知症などで判断能力を失うと、保有する自社株の議決権を行使できなくなる点です。株主総会で代表者の交代を決めることも、株式を後継者へ譲渡することもできず、会社の意思決定が止まる「経営の凍結」状態に陥ります。さらに本人名義の預金口座が凍結され、資金繰りに支障が出るケースもあります。判断能力があるうちでなければ結べない契約も多く、「まだ元気だから」と先延ばしにするほど、家族が選べる手段は静かに減っていきます。準備は、早ければ早いほど穏やかに進められるのです。
家族がやっておくべき5つの準備
大切なのは、親を急かすことではなく、家族で少しずつ情報をそろえていくことです。以下の5つを、できるところから始めてみてください。
1. 自社株と資産の「持ち主」を把握する
誰がどれだけ自社株を持っているか、不動産や個人保証はどうなっているか。株が親族間で分散していると、いざという時に議決権がまとまらず、承継が難航します。まずは現状を家族で共有することが、すべての出発点になります。
2. 親の「会社をどうしたいか」を元気なうちに聞く
継いでほしいのか、売却(M&A)も視野なのか、それとも廃業も選択肢なのか。本人の意思は、判断能力がはっきりしているうちにしか確認できません。問い詰めるのではなく、雑談の延長で少しずつ引き出すのがコツです。一度で結論を出す必要はありません。
3. 任意後見契約・家族信託を検討する
判断能力が下がる前に、親と後継者(または家族)で任意後見契約や家族信託(民事信託)を結んでおけば、いざという時も議決権の凍結を避けやすくなります。どの制度が合うかは家庭ごとに異なるため、専門家と一緒に進めるのが安全です。
4. 重要書類と連絡先の保管場所を共有する
実印・通帳・定款・株主名簿・取引銀行や顧問税理士の連絡先などが、どこにあるか家族が分からないと、緊急時にまったく動けません。一覧にまとめ、保管場所を家族で共有しておきましょう。これだけでも、有事の安心感は大きく変わります。
5. 相談できる専門家とつながっておく
顧問税理士、司法書士、商工会議所、国が設置する事業承継・引継ぎ支援センターなど、相談先を一つでも持っておくと安心です。問題が起きてから慌てて探すより、平時のうちにつながっておくほうが、ずっとスムーズに動けます。
「対立」ではなく「協働」で進める
こうした準備は、ともすると「親の引退を急かしている」と受け取られかねません。だからこそ、家族目線で「お父さん(お母さん)が大事にしてきた会社を、みんなで守りたい」という協働の姿勢を言葉にして伝えることが大切です。親を追い詰める話し合いではなく、家族みんなが安心して暮らすための準備なのだと位置づけると、会話はぐっと前向きになります。
司法書士や弁護士の実務でも、判断能力が低下する前に任意後見契約や信託契約を結んでおくことが、最も確実な対策の一つだとされています。逆に、対策がないまま認知症が進むと、成年後見制度に頼らざるを得ません。その場合、選任された後見人が会社にとって最善の議決権行使をできるとは限らず、経営判断が硬直化しやすいという課題も指摘されています。だからこそ、元気な「今」こそが動きどきなのです。
まず何から始めればいいか
5つすべてを一度にやる必要はありません。まずは「親の意思を一度ちゃんと聞いてみる」ことから始めるのがおすすめです。何から話せばいいか分からないという方のために、つぐひとでは家族向けのハンドブックを無料でご用意しています。話の切り出し方や、家族会議の進め方のヒントが詰まっています。家族向けハンドブック(無料PDF)はこちら。
「うちの場合はどうすれば?」と迷ったら、無料相談フォームからお気軽にご連絡ください。LINEでのご相談も受け付けています(LINE友だち追加はこちら)。お立場に合わせて、ご家族の方・経営者の方・後継者の方それぞれのページもご用意しています。
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本記事は、株式会社C&Cが運営する事業承継メディア「つぐひと」が独自に作成したものです。
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