「この店を、誰かに続けてほしい」——京都の老舗茶舗の主人がそうつぶやいたのは、後継ぎを探し始めてから3年が経った頃のことでした。関西には全国でも有数の老舗が集積していますが、その多くが今、深刻な後継者問題に直面しています。伝統と文化を守るために、家族はどう動けばよいのでしょうか。
関西の老舗が抱える「後継者不在」の現実
中小企業庁の「中小企業白書2024年版」によると、全国の中小企業経営者の平均年齢は62.5歳に達しており、60代以上の経営者のうち約半数が「後継者未定」と回答しています。関西地域——特に京都・大阪・奈良などの歴史的な商業集積地では、100年以上続く老舗企業が多く、この問題はより切実です。帝国データバンクの調査(2023年)では、京都府の後継者不在率は61.3%と全国平均を上回っており、「業歴の長さ」が必ずしも承継の有利さにつながらないことが浮き彫りになっています。
特に京都の町家(まちや)ビジネスは、建物そのものが経営資源であるケースが多く、不動産・のれん・職人技術・顧客リストが複雑に絡み合っています。後継者候補がいたとしても、「何を引き継ぐのか」が曖昧なまま話し合いが止まってしまう例が後を絶ちません。
町家ビジネス承継の3つの壁
①「のれん」と建物の切り離し問題
町家ビジネスでは、建物(不動産)とブランド(のれん)が一体化しているケースが多いです。建物を売却すれば事業継続が難しく、かといって賃料負担が重すぎると承継後の経営を圧迫します。承継前に「何を売り、何を残すか」を整理しておくことが不可欠です。
②技術・文化の無形資産をどう引き継ぐか
染め物、和菓子、仏具など、職人技術を核とするビジネスでは、後継者の育成に最低でも5〜10年かかります。「子どもが継がなければ廃業」という発想から脱し、親族外承継や従業員承継、さらには外部からの後継者採用(サーチ型承継)も選択肢として視野に入れる必要があります。
③「家族の意見がバラバラ」という現実
関西の老舗には、家族経営が多く、経営と家族関係が深く絡み合っています。家族目線から見ると、「誰が継ぐのか」「どう分配するのか」「配偶者の意見はどうか」といった問題が複合的に絡むことがほとんどです。こうした家族の感情的な課題を整理せずに進めると、後継者選定どころか家族関係そのものが壊れてしまう危険があります。
関西で活用できる承継支援の窓口
関西圏では、各都道府県に「事業承継・引継ぎ支援センター」が設置されており、無料で相談に応じています。特に京都府では、京都商工会議所と連携した老舗企業専門の支援体制が整備されており、専門家(税理士・弁護士・中小企業診断士)を無料でマッチングするサービスも提供されています。
また、日本政策金融公庫では「事業承継マッチング支援」を行っており、後継者不在の事業者と後継者候補をつなぐ機能を提供しています。2024年度の実績では、近畿地区のマッチング件数は前年比18%増加しており、外部承継への関心の高まりが数字に表れています(日本政策金融公庫「事業承継マッチング実績レポート2024」)。
さらに、2026年度の「事業承継・引継ぎ補助金」では、老舗・伝統産業向けの加算措置が設けられており、承継に要するコスト(専門家費用・設備投資)の最大2/3を補助する制度が利用可能です。
家族として今すぐできる3つのアクション
「うちも老舗を抱えているが、どこから手をつければいいかわからない」という家族の方に向けて、今すぐ始められる3つのアクションを紹介します。
アクション1:経営者の「意向」を聞く場を作る
まず大切なのは、経営者本人が「会社をどうしたいか」を家族が知ることです。「継いでほしい」のか、「誰かに売りたい」のか、「閉めてもいい」のか——意向がはっきりしないと、どの選択肢も検討できません。家族目線で、責めるのではなく「一緒に考えたい」という姿勢で話しかけることが第一歩です。
アクション2:財務・資産の現状を把握する
老舗企業では、会社の資産(不動産・設備・在庫)と個人資産が混在していることが多いです。まず決算書・不動産登記・融資の保証状況を整理し、「今の経営者が引退したら何が起きるか」を把握しておきましょう。曖昧なまま承継に踏み込むと、後で想定外の税負担やローンが発覚するケースがあります。
アクション3:専門家への相談を早めに検討する
老舗の承継は、一般的な中小企業の承継よりも複雑です。税務・法務・経営の専門家が連携して動く必要があります。「相談したいけど誰に頼めばいいかわからない」という方は、つぐひとの無料相談をご活用ください。家族の立場に寄り添いながら、適切な専門家へのつなぎをサポートします。
まとめ:関西の老舗を守るために、家族が動く
京都・大阪を中心とした関西の老舗ビジネスは、地域の文化・経済・観光を支える重要な存在です。しかし、後継者不在のまま時間が過ぎると、廃業という選択を余儀なくされるケースが急増しています。「まだ早い」と思っているうちに、経営者の体力や認知機能が低下してしまうこともあります。
承継の第一歩は、家族が動くことです。「うちはどうするの?」という一言が、老舗を守る扉を開けるかもしれません。
つぐひとでは、無料の事業承継ハンドブック(PDFダウンロード)もご用意しています。「何から始めればいいかわからない」という方はぜひご活用ください。また、LINE友だち追加で最新の承継情報をお届けしています(LINE友だち追加はこちら)。
個別のご相談は相談フォームから承っています。立場ごとのページ(家族の方・オーナーの方・後継者の方)もあわせてご参照ください。
※本記事は情報提供を目的としており、個別の法律・税務・経営上のアドバイスを提供するものではありません。具体的な判断については、税理士・弁護士・中小企業診断士などの専門家にご相談ください。
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本記事は、株式会社C&Cが運営する事業承継メディア「つぐひと」が独自に作成したものです。
具体的な税務・法務判断は、必ず弁護士・税理士・M&Aアドバイザー等の専門家にご相談ください。