顧問先の社長から、ふとした雑談の中で「そろそろ会社の先のことを考えないとな」と切り出される——。税理士にとって、これは長年の信頼関係があるからこそ届く、重みのある相談です。しかし、いざ事業承継の相談を受けると、税務以外の論点が多く、どこから手をつけるべきか迷う方も少なくありません。この記事では、顧問先から事業承継相談を受けた税理士が、最初に動くべきことを実務に沿って整理します。
まずは「急がず、決めつけず」傾聴する
事業承継の相談で最も避けたいのは、いきなり「では株価評価を」「M&Aなら仲介会社を」と手段の話に入ってしまうことです。社長の頭の中では、まだ「継がせたいのか、売りたいのか、たたむのか」すら整理されていないことがほとんどです。
中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版・2022年)」でも、承継支援の出発点は経営者の意思の明確化と現状把握にあると示されています。まずは結論を急がず、社長が何に不安を感じ、何を望んでいるのかを丁寧に聴くことが、信頼される第一歩になります。
最初の30日でやるべき3つのヒアリング
相談を受けてからの最初の1か月は、方向性を決める土台づくりの期間です。次の3点を押さえましょう。
1つ目は「後継者の有無と意向」。親族内に候補がいるのか、社内の役員か、それとも不在か。帝国データバンクの全国企業「後継者不在率」調査でも、後継者不在は依然として中小企業の大きな課題として報告されており、ここの確認が方針を大きく分けます。
2つ目は「会社の財務と株式の状況」。顧問税理士は決算を熟知しているからこそ、自社株評価の概算や個人保証・借入の状況をいち早く示せます。これは他の専門家にはない強みです。
3つ目は「家族の状況」。後継者候補の配偶者や兄弟姉妹がどう考えているか。承継は会社の問題であると同時に、家族の問題でもあります。税理士が家族目線にも配慮できると、社長の安心感は格段に高まります。
この3つは、できれば社長一人だけでなく、後継者候補も交えて確認できると理想的です。立場の異なる当事者が同じ情報を共有することで、後の認識のズレや感情的な行き違いを未然に防ぐことができます。
自分一人で抱えず、専門家連携の地図を描く
事業承継は税務・法務・労務・金融が複雑に絡みます。税理士が中心に立ちつつ、弁護士や金融機関、M&Aの専門家と連携する体制を早めに描くことが重要です。日本政策金融公庫や各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターは、無料で相談できる公的窓口として活用できます。
大切なのは、税理士が「指揮者」として社長と各専門家の間に立ち、情報を整理する役割を担うことです。社長にとって、信頼する顧問税理士が全体を見てくれているという安心は、何ものにも代えがたい価値があります。
連携先をあらかじめリスト化し、想定されるスケジュール感を社長に共有しておくと、漠然とした不安が具体的な見通しに変わります。最初の段階で全体像を描けるかどうかが、その後の承継の成否を大きく左右します。
選択肢を「対立」ではなく「協働」で示す
親族内承継、第三者承継(M&A)、廃業——どの道にもメリットと留意点があります。税理士の役割は、特定の手段を押し付けることではなく、それぞれの選択肢を公平に示し、社長と家族が納得して選べるよう伴走することです。
とくに親族内承継では、現経営者と後継者の間に立ち、世代間の対立ではなく協働の関係を築く橋渡しが求められます。数字の専門家であると同時に、家族の対話を支える存在になれると、顧問先との関係はより強固になります。
顧問先と家族を、つぐひとと一緒に支えませんか
事業承継は、税理士一人ですべてを背負う必要はありません。後継者やその家族が抱える「もやもや」に寄り添う専門メディア・相談窓口を併用することで、顧問先への支援の幅が広がります。
つぐひとでは、後継者・ご家族・士業の皆さまに向けて、家族目線で事業承継を考える情報と無料相談を提供しています。顧問先にご紹介いただける資料もご用意しています。
- 顧問先に渡せる事業承継ハンドブック(無料PDF)
- 連携・相談のご連絡はLINEから:つぐひと公式LINEに友だち追加
- 個別のお問い合わせは無料相談フォームへ
- オーナー経営者向けの情報は経営者の方へのページもご案内ください
※本記事は情報提供を目的としたものであり、具体的な税務・法務上の判断は、個別の事情に応じて専門家にご確認ください。
関連記事
- 【オーナー向け】M&Aと事業承継の違いとは?60代経営者が知るべき選択肢
- 60代経営者が事業承継準備で最初にすべき5つ|廃業の前に整理する選択肢
- M&A仲介手数料の相場はいくら?中小企業の正しい仲介会社の選び方
本記事は、株式会社C&Cが運営する事業承継メディア「つぐひと」が独自に作成したものです。
具体的な税務・法務判断は、必ず弁護士・税理士・M&Aアドバイザー等の専門家にご相談ください。