親が長年営んできた介護事業を引き継ぐ——その決断は、単なる「経営の交代」ではありません。介護事業には、一般の会社とは異なる厳しい行政規制と、慢性的な人材不足という特有の課題があります。「許認可ってどう引き継ぐの?」「スタッフが辞めてしまわないか?」。家族として、後継者として、こうした不安を抱えている方に向けて、介護事業承継の実務ポイントをまとめました。
介護事業の承継が「普通の会社」と異なる理由
介護サービスを提供するためには、都道府県または市区町村への指定申請が必要です。訪問介護なら都道府県への指定、地域密着型サービスなら市区町村への指定となり、サービス種別によって申請先や要件が異なります。
重要なのは、法人格の変更を伴う承継(事業譲渡・合併)では、原則として新たに指定申請が必要になる点です。株式譲渡(M&A)で法人格を維持した場合は指定を引き継げますが、個人事業主から法人への移行や、法人格の変更を伴うケースでは、一から指定を取り直すことになります。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(2023年改訂版)」でも、介護・医療分野の事業承継については規制対応の重要性が強調されており、専門家との事前確認が推奨されています。
許認可引継ぎで必ず確認すべき5つのポイント
許認可の引継ぎを成功させるには、以下の5点を事前に確認することが欠かせません。
① 承継スキームの選択:株式譲渡なら指定は維持できますが、事業譲渡では新規指定が必要です。どちらのスキームが適切かは、税務・法務の観点からも検討が必要です。
② 人員基準の継続性:介護事業の指定要件には、管理者・サービス提供責任者・介護職員の人数基準があります。承継時に人員が欠けると指定取消のリスクがあるため、引継ぎ前後で基準を満たし続ける体制を整える必要があります。
③ 設備・運営基準の確認:事業所の設備が都道府県の設備基準を満たしているかを事前に確認しましょう。老朽化した設備があれば、承継前にリストアップしておくことが重要です。
④ 指定期間の確認:介護事業の指定には6年の有効期間があります。承継のタイミングによっては更新時期が近い場合もあるため、更新手続きの準備も並行して進めましょう。
⑤ 自治体との事前相談:許認可の引継ぎについては、担当の都道府県・市区町村の窓口に事前に相談することで、手続きをスムーズに進めることができます。担当者とのコミュニケーションを早めに取ることが成功の鍵です。
人材確保が最大の課題——スタッフを引き止めるための実践策
介護事業承継で最も難しいのが、現場スタッフの定着です。帝国データバンクの調査(2024年)によれば、介護・福祉事業所の人手不足感は全業種の中でも特に深刻で、スタッフが「経営者が変わるなら辞める」と感じてしまうケースも少なくありません。
早期の「顔合わせ」が重要:承継が決まったら、できるだけ早い段階で後継者をスタッフに紹介し、直接コミュニケーションを取る機会を設けましょう。「誰が来るのか分からない」という不安が最大の離職リスクです。
処遇・労働条件は変えない(または改善する):承継後に給与や休暇制度が悪化することへの不安を払拭するため、雇用条件は少なくとも現状維持を明確に伝えることが大切です。条件改善が可能であれば、それを早めにアナウンスすることで信頼を獲得できます。
介護人材確保支援の活用:日本政策金融公庫では、介護事業の承継・再生支援を目的とした融資制度を設けており、人材採用・育成にかかる費用への活用も可能です(2025年度実績)。補助金・助成金と組み合わせることで、人材確保にかかるコストを軽減できます。
家族目線で見る介護事業承継の心構え
介護事業を営む親を持つご家族にとって、事業承継は「お金の問題」「手続きの問題」だけではありません。親が地域のお年寄りや障がい者のために長年積み上げてきたサービスを、どう次の世代に引き渡すか——そこには人としての責任と誇りがあります。
家族として関わる際は、親の意向とスタッフの思い、そして利用者さんへの影響を丁寧に汲み取ることが大切です。「誰かが一方的に決める」のではなく、関係者全員が納得できる形を一緒に作ることが、介護事業承継の本質ではないでしょうか。親の会社を引き継ぐかどうか、まず家族でじっくり話し合うためのヒントは、つぐひとが作成した「家族のための事業承継ハンドブック」にまとめています。
まずは無料相談から始めてみませんか
介護事業の事業承継は、許認可の専門知識・人材マネジメント・税務・法務など、多くの専門領域が絡み合う複雑なプロセスです。「何から始めればいいかわからない」という段階からでも、つぐひとでは無料でご相談をお受けしています。
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本記事は情報提供を目的としており、法的・税務的アドバイスを提供するものではありません。許認可手続きや事業承継の具体的な判断については、行政書士・社会保険労務士・税理士等の専門家にご相談ください。
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本記事は、株式会社C&Cが運営する事業承継メディア「つぐひと」が独自に作成したものです。
具体的な税務・法務判断は、必ず弁護士・税理士・M&Aアドバイザー等の専門家にご相談ください。