COLUMN

親が「会社を売る」と言い出した時に家族がすべき5つの対応

「実は、会社を売ろうと思っている」——ある日突然そう切り出されたら、多くの家族は言葉を失います。継いでほしいと思っていた人も、継がなくていいと思っていた人も、驚きと戸惑いは同じです。しかし親のこの決断は、決して珍しいものではなくなってきています。家族目線で見たとき、まず何をすべきかを整理します。

なぜ今、会社を売るという選択をする経営者が増えているのか

帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」によると、2025年の後継者不在率は50.1%で、前年から2.0ポイント低下し7年連続で改善しました。一方で承継の中身は大きく変わっており、血縁によらない役員・社員を登用する「内部昇格」が36.1%となり、これまで最多だった「同族承継」(32.3%)を初めて上回っています。さらに「M&Aほか」も20.6%に達し、いわゆる「脱ファミリー」の流れが加速していると分析されています(帝国データバンク、2025年11月公表)。中小企業庁の2025年版中小企業白書でも、令和6年度の第三者承継(M&A)の成約件数は2,132件と過去最高を更新したことが示されています。日本政策金融公庫の調査でも、後継者が決定している中小企業は一部にとどまるとされており、多くの経営者が親族内での承継にこだわらず、選択肢の一つとしてM&Aを検討していることがうかがえます。親が「会社を売る」と考えるのは、家族への配慮を欠いた決断ではなく、こうした社会全体の流れの延長線上にあるケースが多いのです。

親から聞いた直後に、家族がまず確認すべき3つのこと

驚きのあまり「継がないなんて」「勝手に決めないで」と反射的に言い返したくなるかもしれません。しかし最初にすべきは反対でも賛成でもなく、事実確認です。確認したいのは、(1)どの段階まで話が進んでいるのか(社内で検討中なのか、既に仲介会社と契約し具体的な交渉に入っているのか)、(2)誰に相談してすでにいるのか(顧問税理士・弁護士・M&A仲介会社・取引金融機関など)、(3)従業員や取引先の処遇について親が何を条件として考えているか、の3点です。特に(1)の進捗段階を知らないまま感情的な話し合いに入ってしまうと、既に後戻りできない契約段階にあるケースと、まだ気持ちを整理している段階のケースを区別できず、家族の対応もちぐはぐになりがちです。この3つが分かるだけで、家族が置かれている状況の解像度は大きく上がります。

感情的に反対する前に持ちたい、2つの視点

会社を売るという決断の裏には、多くの場合「後継者に苦労をさせたくない」「取引先や従業員の生活を、体力が続くうちに次の担い手へ橋渡ししたい」「体力的・年齢的にもう難しい」といった、親なりの家族目線の配慮があります。子ども世代がまず持ちたいのは、経営者としての親の判断を頭ごなしに否定しない姿勢です。同時に、相続や今後の生活設計に直結する話でもあるため、感情を脇に置いたまま黙って受け入れる必要もありません。「反対する」でも「黙って従う」でもなく、家族として条件面を一緒に確認し、必要であれば率直に懸念を伝えていく協働の姿勢が、後悔の少ない着地点につながります。

家族会議で話し合っておきたい4つのテーマ

会社を売る話が具体化してきたら、家族間で次のようなテーマを整理しておくと安心です。1つ目は売却によって得られる資金の使い道や、相続における位置づけです。2つ目は株式を保有している親族がいる場合の同意形成で、名義株や分散した株式が後々のトラブルの種になることも珍しくありません。3つ目は従業員の雇用継続や取引先への影響で、買い手企業が誰かによって従業員の働き方が大きく変わることもあります。4つ目は、経営者保証を親が個人で負っている場合の解除見通しです。日本政策金融公庫の調査でも、事業承継は経営面だけでなく家族固有の事情が絡む問題であることが指摘されています。一度にすべてを決めようとせず、優先順位をつけて一つずつ確認していくことが実践的です。

迷ったときは、家族だけで抱え込まない

会社を売るかどうかは、最終的には経営者である親の判断です。しかし家族がその判断の背景を理解し、必要な確認を一緒に行うことで、後々の「知らなかった」「聞いていなかった」という行き違いを減らすことができます。判断に迷う場合は、家族だけで話し合いを抱え込み続けるのではなく、事業承継の専門家や商工会議所・自治体の相談窓口といった第三者の視点を早めに取り入れることをおすすめします。

つぐひとでは、家族で事業承継について話し合うためのハンドブックを無料で配布しています。会社を売る・継ぐ・閉じるといった選択肢を家族目線で整理したい方は、ぜひ活用してください。

本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務・M&Aに関する最終的な判断は、必ず税理士・弁護士・M&A専門家などの専門家にご相談のうえ行ってください。

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本記事は、株式会社C&Cが運営する事業承継メディア「つぐひと」が独自に作成したものです。
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